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将来を見据え、仕事以外でもインプットを欠かさない。忙しくても運動の習慣を身につけたい。そんなビジネスパーソンの間で、今話題のアプリが「みんチャレ」です。
みんチャレは「三日坊主防止アプリ」としてiOSやAndroidでリリースされ、「Google Play ベストアプリ」に選出、App Storeでは評価4.7点(5点満点)とユーザーから大人気。
それもそのはず。通常、新しい習慣を身につけるときの成功率は約8%のところ、みんチャレを使うとその8倍の「約69%」に跳ねあがるといいます。
多忙なビジネスパーソンが毎日努力を続けるには、どんなコツがあるのでしょうか。サービスを運営するA10 LabのCEO長坂剛さんにお話を伺いました。

PROFILE

- 長坂剛
エーテンラボ株式会社 Founder 代表取締役 CEO - 1982年静岡県生まれ。2006年東京工科大学 メディア学部卒業後ソニー株式会社に入社。BtoBの営業やプレイステーションネットワークのサービス立ち上げに従事。ソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」から独立しA10 Lab Inc.を創業。
人は「自ら行動を起こすこと」で幸せを感じられる
―「みんチャレ」は「三日坊主を防止する」とのことですが、どんなアプリなのですか。

「みんチャレ」は、ダイエットや勉強、ヘルスケアなど「新しい習慣」を身につけたい匿名の5人がチームを組むことで、習慣化を促すアプリです。おかげさまで現在、ユーザー数は25万人を超え、少しずつ認知をいただいています。
ちょうど受験シーズンが一段落して、「国家試験もモチベーション高く勉強できました」とか、「受験勉強できたのはみんチャレのおかげです」とか、直接アプリの問い合わせフォームから送っていただくこともあって。
ユーザーから改善の意見などをもらいながら、ますます使いやすいアプリにできればと思っています。

―長坂さんはもともと、ソニーにお勤めだったんですよね?
はい。プレイステーションのソニー・コンピュータエンタテイメント(現ソニー・インタラクティブエンタテイメント)で新規事業に携わっていました。もともとゲームが好きで、「ゲームで人を幸せにしたい」と思っていたんです。
でも、いくらゲームをしている間は幸せでも、全クリアしてしまえば、その幸せには終わりが来てしまう。ゲームへのめり込めばのめり込むほど、実生活との乖離に苦しんでしまう人もいたりして・・・ゲームの限界というか、難しさを感じるようになったんです。それで、ゲーミフィケーションによって人の幸せに寄与することができれば、と思い、研究を始めました。
すると、人は「自分から積極的に何らかの行動を起こすことで幸せを感じる」という統計結果を見つけました。ただ、その行動の多くは、モチベーションの低下や物理的な制約など、さまざまな要因から続かなくなってしまう。
それなら、その要因を取り除き、行動を起こしつづけられる環境を作り出すことで、人を幸せにできるのではないか、と。それが「習慣化を促すアプリ」の開発に至ったきっかけです。

―「みんチャレ」はソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」に採択され、2015年11月にリリースされました。それが、2016年12月にソニーから独立し、A10 Labを創業されたのは、なぜですか?
プログラムに採択される以前から、独立したいと考えて行動していました。
一口に「習慣化」といっても、ダイエットや学習、筋トレや家計管理などさまざまなジャンルがあります。各ジャンルのプロ、つまり他の企業さんとコラボして進めていくため、そしてユーザー一人ひとりの要望に応えるためには、スピードが命。
「新しい行動の習慣化を促す」というアプリの特性的にも、PDCAをなるべく早く回して、事業を回す環境を自分たちで構築したほうが、ユーザーにとっても最善だろうと判断して、ソニーから独立しました。
同じ目標を同じ属性のチームで目指すと成功率が上がる
―そもそも「習慣化」というのはどういう状態だと定義されているのですか。
「無意識的に何らかの行動を起こせる状態」といったところでしょうか。
日常生活の約9割は無意識でやっていることで占められているんですよ。「さあ、歯を磨こう!」なんて「歯を磨く」とか、「朝ごはんを食べる」ことを意識してやっている人はそういませんよね。
行動を習慣化するにあたって、無意識的にできるようになる前には意識的にそれをやろうとするフェーズがあります。
―なぜ「習慣化」させることが難しいのでしょうか。

大きく二つあります。一つは、物理的な制約があるから。「朝5時に起きたい」のに、いつも午前1、2時に就寝しているのでは、そもそもの睡眠時間が足りないから、起きられないのも仕方ありません。資格試験を受けるための学習時間を確保したいのに、毎日仕事が遅くなって、寝に帰るだけ・・・となると、それも続きませんよね。
二つ目は、環境的な制約。十分に時間はあるのに、家にいるとつい他のことを始めてしまう、というのは、環境的な制約の一つです。「自分はどうせ、習慣を身につけるのはムリだろう」という思い込みも、環境によるものが大きい。
人は経験から学びますから、失敗体験を重ねて、「結局何もできなかった」「どうせダメだろう」と諦めてしまう。大人になると一歩を踏み出すハードルがどんどん上がります。子どもは先入観がないから、いろんなことに挑戦できるんです。
―よく「習慣が続かないのは、意志が弱いから」と言われますが・・・。
ある種の根性論というか、「意志」というのは習慣化にほとんど影響をおよぼさないことが分かっています。そもそも、意志を持っていれば習慣化できるなら、年始に「新年の抱負」を掲げていれば、みんなそれを実行できているはずです(笑)

人はとても環境に左右される生き物で、最近の研究では、会ったこともない友人の友人が太っている場合、その人自身も太りやすい傾向にあることが分かっています。意思の要素というより、環境によるものなのです。
―それでは、物理的制約と環境的制約の二つをなるべく取り除くことで、習慣化を促すことができる、ということですね。
私たちの場合、阻害要素を取り除くことを主な目的とするのではなく、習慣化するセオリーの一つとして、ゲーミフィケーションを採用しています。
一つ明確なのは、人はフィードバックを得られるようになると、もっと行動するようになる、ということ。そしてその行動は、なるべく同じような属性かつ同じような目的の人とともに行ったほうが、より高い成果が得られるのです。
医学系の研究では、ダイエットする場合、同じ性別、役職、体重など、なるべく同じ属性、環境の人と一緒に行動したほうが、習慣化しやすいということが分かっています。それをこの「みんチャレ」アプリにも実装して、ユーザーがなるべく同じ属性の人とチームを組めるように誘導する仕組みを取り入れています。
―習慣化と聞くと、一人で取り組むことを思い浮かべますが、同じ目標をなるべく同じ属性の人とともに実行する、ということですね。

全部が全部同じ人を見つけるのは難しいかもしれませんが、目標設定やライフスタイル、年齢や関心事など、さまざまな観点からなるべく同じようなユーザーとチームを組むようにします。そのほうが、より的確で共感性の高いフィードバックが得られる可能性が高くなるのです。
何らかの目標設定をしている以上、なかなかすぐに成果が上がるわけではありません。そんなとき、「大変だよね」「点数が上がってこないね」といった「共感」と、「しんどいけど、がんばろう」「試験まであとちょっとだから」などの「励まし」。
この共感と励ましという二軸からなるフィードバックがあれば、チームに強固な信頼関係が生まれ、成果が出やすくなる。そして、その信頼関係が強まれば強まるほど、そこまで逐一フィードバックがなくても、習慣化を継続することができるのです。
―チームメンバーが「5人」というのは、何か根拠があるのでしょうか。
実際、3人とか6人とか、他の人数も試してみたのですが、5人チームが最も結果が良かったのです。3人だとフィードバックがタイムリーに返ってこない場合があり、6人だと一人くらい「自分がやらなくてもいいか」とサボる人が出てくる。
古来からの「五人組」もそうですし、お互いに助け合い、法律を遵守するよう監視するという意味では、5人チームがいちばん適した人数である、というのはそれなりの妥当性があるのだと思います。
また、みんチャレでは「にゃんチャレ」というbotキャラクターがチームを活性化するシステムを取り入れています。

例えば、「すごいにゃ!」と励ましてくれたり、「全員達成!みんな偉いにゃ!」と褒めてくれたりします。キャラクターによってはマンネリに陥ってしまうようなタイミングで「今日くらいは、休んだら?」と、逆にチームの取り組みを邪魔するようなメッセージを入れる。そうするとかえってメンバーには「負けてたまるか!」と士気が高まるんです。
「週1より毎日」「好きなことと組み合わせて」・・・習慣化するコツは?

―新しい行動を習慣化するにあたって、初期と継続、それぞれのフェーズによって、必要なマインドセットや仕組みも異なってくるのでしょうか。
まず、初期フェーズは「習慣を意識するきっかけを与えること」が重要です。「今日はこれをやりましたか?」とリマインドする機能は、それにあたります。
その次は、「継続するのがつらい」フェーズ。飽きてしまったり、「なんでこんなことをやっているんだろう」と根本を疑うようになってしまったりすると、つらくなってきます。そんなときには「この人たちと一緒にがんばれるのが楽しい」「なりたい自分になるために、今がんばっている」などと、習慣の本質的な意義を思い出させ、「惰性でもいいから続けられる」環境を与えるのです。
そして、すでに習慣は身についたけど、うっかりして忘れてしまうことのあるフェーズ。連続してできていたものが1日空いてしまうと、一気にモチベーションを失ってしまうことがあります。習慣には取り組んだけど、報告するのを忘れてしまって、いつの間にかフェードアウトすることもあります。でもチーム内の他の人が次の日も変わらず報告していると、「みんなも頑張っているから」と、もとのルーティンに戻りやすくなるのです。
―習慣の内容・特性によっても、定着しやすくなる方法は異なりますか。
習慣には二種類あって、一つは「勉強する」「運動する」など時間を使う習慣。これは、夜よりも朝・昼に設定したほうが成功率が高くなります。夜は残業や飲み会など、何かと阻害要因が増えてしまうからです。そしてもう一つは「食べるものを変える」「体重を記録する」など何かを変える習慣。これはとにかく「意識を向けること」が重要になってきます。
いろんな習慣を一気に始めると、キャパシティオーバーで中途半端になってしまいそうに見えますが、実は組み合わせによってはそのほうが長続きする、という検証結果もあります。「早起きをして、勉強する」「アニメを観ながら筋トレする」など、すでにあるルーティンや自分の好きなことと組み合わせるんです。

それと「毎日はちょっとハードルが高いから、週1回から始めてみよう」というのも、簡単そうで実は続きにくい。週1回というかぎられた時間で、もしその日が天候不良や体調不良などでパスせざるを得なくなると、次の週には2週間も間が空いてしまうんです。
それなら、「平日はウォーキングして歩数を計測し、週末にランニングする」という組み合わせで、毎日なんらかのルーティンを取り入れるようにしたほうがいい。このメソッドは、ユーザーさんが見つけたんです。
―ともに目標へ取り組むチームに必要なマインドセットは?
これはまさにチームビルディングと重なるのですが、重要なのは自己開示できるかどうかなんです。
もし習慣に取り組めなかったり、記録を忘れたりしてしまっても、率直に「忘れてしまいました」と自分の失敗を報告すること。どうしても利害関係のある仲間だと、自分のことを立派に見せたがるところがありますけど、匿名のチームだからこそ、気兼ねなく自己開示できるんです。
―もしアプリ以外で、習慣づけをするとしたら?
まずは、環境作りですね。もし「資格試験に合格すること」を目標にするなら、なんとしてでもそのための勉強ができるような環境を作り出すこと。ただ、机に向かう、というよりは、何か講座に通ったほうが、自分が継続的に勉強できる環境が整いやすいのは確かです。
それと、一人でも二人でもいいから、なるべく利害関係のない、目標を同じくした仲間を見つけることです。学生時代の仲間と、チャットグループを作ってやりとりするのも良いですね。
やはり、「今日はできませんでした」というのを素直に言えるのが重要なんですよ。仕事の仲間でも十分なチームビルディングができていて、自己開示できるのであれば、問題ないですけどね。
―最後に、長坂さんがみんチャレで実現したい世界はどんなものですか。
人と比べるのではなく、「自分はこれができた」という成功体験を積み重ねることで、一人ひとりの自己効力感が高まり、みんなが幸せを感じられるようになってほしいですね。
そんな、たいそうな目標を持っている人なんて、そうそういないと思うんです。でも、例えば「玄関を掃除する」という習慣を毎日やり続けると、本当に目に見える形でキレイになる。それは確実に自己効力感につながりますよね。何かを続けていれば、なりたい自分に近づいているはずなんです。
今、平均の成功率は約69%ですが、それを80%、90%くらいにまで高められたらいいなと思っています。おそらく8割の人が新しい習慣を身につけ、成功体験を重ねられたら、社会全体が変わると思うんです。

[取材・文] 大矢幸世、岡徳之
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