「あの人」に聞く、今学びたいこと・学び方

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人生100年時代、学び直しの重要性は理解しているものの、「具体的に何を学んでいいか分からない」「自分の将来に活きるものを学ぶべきという気持ちが強く、学びが打算的でつまらないものになってしまう」と悩むビジネスパーソンが少なくありません。

そこで今回は、一歩先を行く、活躍するビジネスパーソンが今何に興味を持ち、学びたいと思っているかを知ることで、学び直しのテーマや学び方に対する気づきをお届けします。

INDEX

合同会社こっから代表社員/一般社団法人Brain Active with代表理事/米国ミネルバ社と提携して行うリーダーシップ研修講師 黒川公晴

合同会社こっから代表社員/一般社団法人Brain Active with代表理事/米国ミネルバ社と提携して行うリーダーシップ研修講師 黒川公晴さん2006年外務省入省。米国ペンシルバニア大学で組織開発学修士を取得。2018年に独立後は、国内外で多くの企業に組織開発・リーダーシップ開発のサポートを行う。科学ベースの教育法で世界的に有名な米国のミネルバ社と提携し、日本の企業向けにリーダーシップ教育も展開。研修の詳細はこちらの記事にて

今、学んでみたいことは何ですか?

職業柄、自分がそのまま提供商品という感じなので、日頃からインプットはとても大切にしています。常に学びたいトピックが複数あって、今も机の上には、「多様性」「NFTビジネス」「行動経済学」、哲学書など、いろんな読みかけの本が並んでいます(笑)。

ただ、今強いてあげるとすれば、「学習」というテーマそのものについてもっと深めたいですね。人間はどうすれば最も効果的に学べるのか? 知識を実践知に変えるために何をやれば良いのか? この辺りが大きな問いです。

なぜ、それを学びたいと思ったのでしょうか?

今私の会社では、科学ベースの教育法で世界的に有名な米国のミネルバ社と提携して、日本の企業向けにリーダーシップ教育を展開しています。ミネルバのカリキュラムや教え方は、すべて神経科学や認知科学など学際的な研究に裏打ちされており、「単なる知識」を「使える知恵」に変えていくためにあらゆる工夫が編み込まれています。私自身、ミネルバの講師として実際に講義を担当しているのですが、その緻密さには驚かされます。

こうした新しい学習法を日本風に昇華させ、高等教育から社会人まで現場の教育メソッドに浸透させていけば、課題を解き、社会をより良く変えるリーダーがもっと増えていくと思います。「事を成す力」というか、頭でっかちではなく「想いを形にする力」を、学習法の進化によって広めていきたいですね。

ご自身が効果的・効率的だと感じて実践している学び方を教えてください。

1つ目は、学びのつまみ食いです。先述の通り、今私の机にはいろんな本が読みかけで並んでいますが、実際には日々これらを少しずつ読み回しています。「インターリーブ手法」といって、1つの問題に集中し続けるより複数のテーマを行き来しながら学んだほうが、定着が高まるという手法です。

2つ目は、インプットしたら必ず実践します。例えば、あるテーマについて1冊(あるいはたった1章でも)読んだら、少しでも翌日の業務に活かしてみる。いわゆる「ラーニングピラミッド」では、読書の定着率はたったの5%ですが、体験の定着率は75%です。学んでもやらない、やらないから定着しない、定着しないから学びたくなくなる、という負のスパイラルを起こさないためにも、実践が重要です。仮に活かせる仕事がなくても大丈夫です。「人に教える」は定着率90%なので、得意げに同僚や家族に話すだけで良いのです。

3つ目はテーマの選び方です。自分的には学ぶテーマは大きく2つあって、一つは業務に直結して必要なもの。もう一つは、自分を振り返るために大切なテーマ。前者は主にビジネススキル系が多いですが、そればかりだと視野がどんどん狭くなってつまらないので、「自分はどう生きたいのだっけ?」という問いを与えてくれる読み物や体験を意識的に選びます。人生そのものを楽しむために学びたいですよね。

株式会社シナモン 代表取締役社長CEO 平野未来

株式会社シナモン 代表取締役社長CEO 平野未来さん

東京大学大学院修了。レコメンデーションエンジン、複雑ネットワーク、クラスタリングなどの研究に従事。世界経済フォーラムが選出する世界に変化をもたらす40歳以下のヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)の2022年度クラスに選出。2021年より内閣官房新しい資本主義実現会議有識者構成員に就任

今、学んでみたいことは何ですか?

抽象的ですが、今、私が最も関心のあることは「エゴを無くす」ということです。

なぜ、それを学びたいと思ったのでしょうか?

私は今年、第三子を出産しましたが、その子は難病のため、入院しています。私にとって悲しい出来事でしたが、そのことがきっかけで「世の中の中心は愛だ」という想いを強めるきっかけになったのです。

産後しばらくの間、病児と家族専用のホスピタリティハウスにお世話になっていたのですが、そこで働くスタッフの方々は、本当に優しくて、愛を感じました。私が困っていると、ハウスの中のルールを超えて、何ができるのかを一緒に考えてくださるのです。

読者のみなさまに同じ経験がなかったとしても、日々の業務の中で、社内外の対人関係の中で、たくさんの葛藤を感じることがあると思います。イライラすること、許せないこと、そういった自分と他者の間に生まれる葛藤の原因は「エゴ」にあると思っており、愛のある世界を実現するには、エゴを無くしていきたいと思ったのです。

愛を中心とした世界になるためには、今の資本主義を超える新しいイデオロギーが必要かもしれませんが、経営者として、ビジネスを通して、愛というものをより強化していける会社でありたいと考えています。

こうした理想を掲げていくにあたって、現在弊社で強化している組織のトランスフォーメーション体質が活きます。多様な観点で物事を見ることができるスタッフたちと、組織として、まずは現在の経済構造において存在感を発揮しながらも、日々学び、イノベーションと未来を担う変化を生み出していきたいと考えています。

このように、新たな経験と現在すでに取り組んでいることを合わせて考えても、今の私にとって、「エゴを無くす」ということはとても意味のあることであり、最も学びたいことです。

ご自身が効果的・効率的だと感じて実践している学び方を教えてください。

私は3児の母ですので、学ぶ時間は育児のすき間時間です。すき間時間を活用して、読書をしたり、YouTubeなどで学んでいます。

加えて、例えば本を読むときは、私自身が「~すべき」ことよりも、今意味のあること、私が大事にしていることや、今学びたいことに関連する書籍や動画からたくさん学んでいます。これは、学びにおいて、自身のテーマに対する深い関心が重要だと考えているからです。人生において、さまざまな経験をすることにより、学ぶ機会や学びたいと思う気持ちが芽生えると感じています。

効果的に学ぶためには、まず、成功や失敗などさまざまな経験をし、その経験について考え、心の底からの関心と学ぶ意欲を持つことが重要だと感じています。私が登壇するときにもお話させていただくのですが、読者のみなさまにも、ご自身にとって「意味のあること」に目を向けていただき、行動に移していただくことをお勧めします。

Notion Labs, Inc. ゼネラルマネジャー日本担当 西勝清

Notion Labs, Inc. ゼネラルマネジャー日本担当 西勝清さん福岡出身、オランダ・エラスムス大学ロッテルダム経営大学院にてMBA取得。大学卒業後、シスコシステムズへ入社。その後、LinkedIn Japan、WeWork Japanを経て、2020年9月より日本1号社員としてNotionに入社。現在は日本代表として、営業・マーケティング活動を始めビジネスオペレーション全般を担当

今、学んでみたいことは何ですか?

運動、栄養や睡眠のメカニズムについて、ぼんやりと理解しているものを徹底的に学びたいです。

少しマニアックな話になってしまいますが、筋トレ・有酸素運動の割合や頻度、PFCバランス(※)や平均睡眠時間・昼寝の有無などが、体調やパフォーマンス、リラックスにどういった影響を及ぼすのかを学びつつ、トライ&エラーで自分にとって一番フィットするものを考えたいです。

※摂取カロリーに占める、たんぱく質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の比率

なぜ、それを学びたいと思ったのでしょうか?

グローバル企業で働き、ビジネスを立ち上げていくためには、常に心身ともに健康でアスリートのようにパフォーマンスを発揮する必要があります。具体的には、毎日の業務の中でのすばやい意思決定と実行、ときには難しい問題にも直面する中での解決策の導出と実行、また、海外とのビデオ会議や海外出張といった時差との戦いなどです。

例えば、毎日決まった時間に就寝し、決まった時間に起きる、週3〜4回バランスよく筋トレとウォーキングを行い、健康的な食生活を心がけることで、いつも気持ちよく仕事を行える環境を整えています。

しっかりとしたリフレッシュ時間も作りながら集中力を保ち、チームで大きな成果を発揮していく。そのためには、まずは自分自身、そしてチームメンバーの心身のマネジメントが最も重要だと強く感じています。

ご自身が効果的・効率的だと感じて実践している学び方を教えてください。

個人的にはポッドキャストや「Voicy」など音声によるインプットが非常に効果的だと感じていますリフレッシュやエクササイズのために、散歩やジムに行くことが多いのですが、その際にビジネスから健康にいたるまで、さまざまなジャンルを聴いています。

特に散歩中は知識が頭に入りやすく、あまり忘れることもありません。聴くことのほうが読む・書くよりも学習効果が高いのかどうか、専門的なことは分からないのですが、散歩そのものにリラックス効果を感じており、頭がすっきりするので、耳から入ってくる情報がすっと理解しやすいのかもしれません。同時に散歩の距離も進むため、すごく効果的に感じています。

仲山考材株式会社 代表取締役/楽天グループ株式会社 楽天大学学長 仲山進也

仲山考材株式会社 代表取締役/楽天グループ株式会社 楽天大学学長 仲山進也さん

慶應義塾大学法学部卒業。シャープを経て、創業期(社員約20名)の楽天に入社。2000年に楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立、人にフォーカスした本質的・普遍的な商売のフレームワークを伝えつつ、出店者コミュニティの醸成を手がける。2007年に楽天で唯一のフェロー風正社員(兼業自由・勤怠自由の正社員)となり、2008年には自らの会社である仲山考材を設立、考える材料(考材)をつくってファシリテーションつきで提供している。著書『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方』ほか多数

今、学んでみたいことは何ですか?

「運動学習理論(エコロジカルアプローチ)」です。文字通り、人がどのように運動を学習し、身につけていくかを体系化した理論のことです。

なぜ、それを学びたいと思ったのでしょうか?

いつも育成談義をする友人から「面白いよ」と聞いて、サッカー専門誌『フットボリスタ』の「エコロジカルアプローチ特集」を読んだことがきっかけです。

「育てるのではなく、育ちやすい環境をつくる」が持論のぼくにとってドンピシャすぎる内容で、Twitterで「エコロジカルアプローチすごい!」と面白がっていました。すると、雑誌に出ていたエコロジカルアプローチ研究者さんとつながって、Zoomでおしゃべりすることに。

その方は、人材育成や組織育成の切り口というよりも「運動学習理論」としてエコロジカルアプローチを研究していました。「カオスを生み出すアクティビティ設計による自己組織化」という運動学習理論の研究知見が、ぼくの探究テーマである「わちゃわちゃするとチームになるよね(ファシリテーター型リーダーシップ)」という考え方と通じすぎていて、1時間の予定が、面白すぎて2時間になって、それでも足りなかったので「イベントをやりましょうか」という展開に。ビジネス系やサッカー系、子育て系など多様な人たちが集まって、盛り上がりました。

ご自身が効果的・効率的だと感じて実践している学び方を教えてください。

このように、「詳しい人とコラボ企画をする(一緒に仕事をする)」ことです。

その後、ご縁があってビジネスメディア編集者さんとおしゃべりしている中で、「なにか連載しませんか?」と言っていただきました。「実はこんなことできたら面白そうだと思っているのですが……」と、先ほどのエコロジカルアプローチ研究者さんとのコラボ企画書を作って送ったら、「これは面白い企画になりそうです。ぜひ進めましょう」ということになっています。おかげさまで、エコロジカルアプローチの学びが深まりそうです。

スリーエム ジャパン株式会社 代表取締役社長 宮崎裕子

スリーエム ジャパン株式会社 代表取締役社長 宮崎裕子さん

慶応義塾大学法学部卒業。ワシントン大学法科大学院、知的財産法・政策学コース修了。日本国およびニューヨーク州の弁護士資格を保有。法律事務所や外資系企業の企業法務を経て2017年にスリーエム ジャパンの法務及び知財的財産部門ジェネラルカウンセルとして入社。2021年6月に代表取締役社長に就任

今、学んでみたいことは何ですか?

「幸福経営学」です。「幸福経営学」は、ポジティブ心理学や組織論、経営学を統合した学問です。

実は、2018年ごろから学び始めているのですが、2021年6月の社長就任後は、社員と組織のウェルビーイング(Well-being・幸福)をさらに高めたく、より深く学んでみたいと考えるようになりました。

なぜ、それを学びたいと思ったのでしょうか?

3Mは、社員のウェルビーイング(社員一人ひとりが心身共に健康であり、良好な状態であること)を最優先事項の一つとしています。そのため、ウェルビーイングをさらに高めるためにはどうしたらよいのかを、経験則や個々人の頑張りに頼るのではなく、そのメカニズムを知り、どのように実践していけば効果が出るのかという科学的裏づけを学びたいと思ったことがきっかけです。

3Mは、リモートワークと対面でのコミュニケーションを併用していますが、この環境下で社員のウェルビーイングを高めつつ、イノベーションを継続していくためにはどのような仕掛けが必要か、研究結果を知りたいということも理由です。

個人的にも、常に学び、成長し続けたいと考えていることも「幸福経営学」を学び始めた理由の一つでもあります。今まで自分が培った専門領域だけにこだわり続けるのではなく、学ぶことを継続し、いくつかの専門を横断した総合的な視点を持ちたいと考えています。

ご自身が効果的・効率的だと感じて実践している学び方を教えてください。

有志の研究会に参加して、同じ志を持つ人とのつながりを持ち、共に学ぶことが効果的だと思っています。関連書籍を一人で読むだけではなく、ペースメーカーとするためにオンラインの読書会に参加したり、有識者の講義を聞いた後に学びを共有したりしています。学んだことをポスト・イット ノートに書きだして、思考の整理をしたり、さらに学びたいことや実践したいことの計画を立てたりもしています。

[取材・文] 岡徳之

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