正論もハラスメント? 「ロジハラ」をする側の特徴と受けた側の対処法を解説

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「セクシャルハラスメント」「パワーハラスメント」などに代表されるように、職場には近年さまざまなハラスメントが存在します。

特に最近ビジネスの場面では「ロジカルハラスメント(略称:ロジハラ)」という、正論を振りかざして相手を追い詰めてしまう行為について耳にする機会も増えてきました。

今回はロジハラの定義や、ロジハラにならないための対応法、受けた際の解決法を解説します。

知らないうちにロジハラで相手を追い込まないよう、また、ロジハラの被害で自分が追い込まれないよう、良好なコミュニケーションを取るための参考にしてみてください。

INDEX(読了時間9分)

ロジハラとは

ロジカルハラスメントの意味

「ロジカルハラスメント(logical harassment)」とは、正論を強く主張しすぎて、相手を追い詰める行為を意味します。

ロジハラは、仕事上の様々な場面で起こり得ますが、特に「会議での意見対立」や「部下への指摘・注意」など、議論や叱責が絡む場面で起こりがちです。また、ディベートが多い企業など社風や業態によってもロジハラが起こる傾向が強まります。

ロジハラをする人は他者の気持ちに共感することができない傾向にあるため、知らず知らずのうちに相手を追い詰めてしまうのです。

正論とロジハラの境界線

正論やロジカルであることそのものは、仕事において必要なことです。正論を越えてロジハラになるのは、相手への伝え方にポイントがあります。

例えば部下のミスや相談に対して「今回の問題点はここだった」などと中立的な事実を伝えるのは正論に当たるでしょう。

しかしその際に「よって、こういう対応をすればよい」と相手の思考や感情を考慮せずに自分の考えるロジックだけで言い切ったり、一方的に論破してしまうと、ロジハラに該当する可能性があります。

「ハラスメント」は受け止める側の気持ちが発端となります。

「論理的に正しければよい」と考えるのではなく、相手の受け止め方に注意するようにしましょう。

ロジハラの何が悪い?組織にもたらす影響

ロジハラが起こることで、他者や組織にどのような影響や問題が生じるのかについて解説します。

ロジハラを受けた人の精神状態

ロジハラを受けた人は精神的なダメージを受けます。委縮をしたり、自分はダメな人間なのだと思い込んだりして、最悪のケースでは休職や退職につながる可能性もあります。

厚労省の調査で、労働者の54%と半数以上の人は、何らかのストレスを抱えているという結果があります。ストレス社会である現代では、ちょっとした言動が相手のメンタルに大きな影響を与えるため、過度なロジハラはメンタルヘルスの不調につながるリスクも内包しているのです。

※「令和2年労働安全衛生調査」厚生労働省

メンタルに不調を抱えた社員はパフォーマンスも低下しやすく、事業の成長や発展も難しくしてしまいます。

ロジハラが起きている社内の環境の変化

ロジハラが起きている場合、社内の雰囲気はストレスや緊張感で張り詰めるようになります。具体的には「絶対にミスができない」や「またロジハラをされたら嫌だ」のようなプレッシャーを感じる社員が増え、意見を言い出しにくい職場環境になります。

職場の雰囲気が悪いことは、組織のパフォーマンス低下はもちろんのこと、人材の流出や採用にも影響を及ぼします。居心地の悪い職場に嫌気がさして転職する社員が出る可能性があることに加え、入社希望者が職場見学した際にも良い印象は抱かないでしょう。

ロジハラをする人の特徴

ロジハラを行ってしまう人には共通の特徴があります。ここでは代表的な特徴4つをピックアップして紹介します。

1. 自分が絶対的に正しいと思っている

ロジハラをする人は、無意識のうちに自分の意見こそが正義だと思い込んでいることが多いです。

意見対立が起こった時には、自分が正しく相手が間違っている前提で話を進めるため、相手の立場としては、ひたすら意見を押し付けられている状態でしょう。

ロジハラをしている本人は「正しい考え方を理解させなくては」という親切心や使命感に燃えているため、ロジハラに気付きにくくなるのです。

2. 相手より優位に立ちたい

ロジハラをしてしまう背景には、相手より優位に立ちたい、優越感を持ちたいという願望があります。

このタイプは実は自分に自信がなく、手っ取り早く自尊心を満たしたいために、自分の近くにいる人に正論を振りかざしてしまう傾向もあります。

3. 相手ができない人だと決めつけている

正論を振りかざすのは、相手ができない人間、ダメな人間と決めつけている場合もあります。

また、追い詰めるくらいロジカルにダメ出しをすることが相手のためだと信じ込んでいる人もいます。このタイプの人は自分自身が若手の頃に同様の経験をしており、結果として自分がスキルアップできたと思っている場合もあります。

相手の成長を願って正論を突きつけているだけに、そのリスクに気づきにくいのです。

4. 相手の気持ちに共感できない

自分がロジハラをしている自覚がない人は、相手の気持ちへの共感が足りないタイプも多いです。

相手への共感があれば、議論が一方通行になることは少なく、意見の妥協点を探す建設的な議論となります。

しかしロジハラをする人は、他人の意見に耳を傾けようとする意識が低いため、聞き手は疲弊しきってしまうのです。

「正論=悪」ではない!ハラスメントにならないための4つの対応策

正論は間違いではないですが、伝え方を間違えるとロジハラにもなりかねません。ハラスメントにならず、相手に正しく意見を伝えるための4つの対応策を紹介します。

1. 他者に見せつけるような状況をつくらない

ロジハラが起きやすいのが叱咤など「怒る」場面です。

他の人が見ている前で理屈だけで追い詰められてしまうと、羞恥心が沸いたり自尊心が傷つけられたりします。たとえ指摘が真っ当であっても、ダメージの方が大きく、内容を受け入れられないこともあります。

従って、会議中やオフィスなど他の人が見ている場ではなく、相手と二人きりになる環境で指摘をするようにしましょう。定期面談の場などがあれば、注意したい事項をまとめておいて、成長課題として伝えることも有効です。

2. 相手の気持ちに対して想像力を働かせる

コミュニケーションは、相手の感情を察する必要があります。

例えば部下がミスを起こし自分を責めて委縮している様子が見て取れるなら、まずは「失敗は誰にでもある」など、相手に共感し自信回復を促すような言葉をかけます。相手がきちんと内容を解釈できる精神状態になったと判断したら、指摘や改善点を伝えるようにしましょう。

また、自分が話す前に相手の話を聞くことも重要です。まず相手の口から「どういう経緯でそうなったのか」「今後再発しないためにはどうすればいいか」などを話させるようにしてください。            

3. 共感力を高める

共感力を高めることは、相手に心理的な安全をもたらします。心理的安全性とはハーバード大学の組織行動学者であるエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念で、組織の中で安心して、いつでも誰に対してでも自分の考えや意見を発言できる状態のことをさします。

共感力を高めるには、他者の考え方を受け入れることが前提となります。相手の意見を頭ごなしに否定するのではなく、まずは「そういう風に考えたんだ」などと受け入れるようにしましょう。

共感力を示すためには相槌も重要です。相手の言ったことに適宜相槌を打つだけでも、話し手は聞いてもらえていると感じます。

4. 伝わる話し方を意識する

解決策や改善案を提示する時は、「こうすべきだ」と正論をふりかざすのではなく、相手に伝わりやすい話し方を意識してください。

「べき」などとMUSTの要素を強くするのではなく、「こうしたい」とWANTの要素を強くするだけでも、印象はずいぶん和らぎます。MUSTが強すぎると、聞く相手は選択の余地がないように捉えがちです。結果「押し付けられた」という感情が芽生えてしまいます。

また「自分はこの改善案が最良だと思っているが、どう思う?」など自分が意見を述べたあとに相手の意見を聞くのも効果的です。

相手への伝え方に関するコツは以下の記事でもご紹介しています。ぜひご覧ください。

正しい怒りならパワハラにはならない。溜め込んでしまう上司のための「正しく怒る技術」

リモートワークで部下といい関係を築く「アサーティブ」なコミュニケーションとは?

自分がロジハラを受けたときの対処法

最後に、自分がロジハラを受けたときはどうすべきかの対処方法をお伝えします。最初の3ポイントは相手に直接対応する方法ですが、後半の2ポイントは間接的に対応する方法です。自分のメンタルの状態に応じて相応しい対処法を選びましょう。

1.  話を最後まで聞いてみる

ロジハラをする人は自分の意見が正義と思っているため、話を最後まで聞くことで満足する場合もあります。

自分が納得できない意見を最後まで聞くのはそれほど楽しい時間ではないですが、途中で遮ってしまうと、さらに話が長くなるリスクもあるためまずは一通り聞いてみるのも対処法となります。

ただしロジハラをする人は周囲から敬遠されていることも多いため、話を聞いてもらえたことで気に入られ、その後話しかけられる頻度が上がる可能性もあります。

2.  建設的に議論する

相手の意見に矛盾が生じている場合、建設的に指摘をすることでロジハラを抑止できることもあります。相手が上司の場合はやりにくいかもしれませんが、矛盾を本人が認識すれば、その後は態度を改めるケースがあります。

ただし、この場合は相手の感情にも着目するようにしましょう。理屈で返すのは感情を逆なでしかねないため、状況や言い方次第では関係を悪化させてしまいます。相手が冷静なときに、謙虚な姿勢で「少し気になる点があるのですが」や「出過ぎた意見かもしれませんが」などのクッション言葉を入れながら会話すると、相手も聞き入れやすくなるでしょう。

3. 直接「ロジハラはやめてください」と言う

正論を突きつける傾向がある人は、ロジハラの自覚がない場合もあります。

その場合は本人へはっきりと「それはロジハラだと思う」「ロジハラはやめてほしい」など自分の考えを伝えてみるのも手段の一つです。

伝える際には、人間には論理と感情があるという前提に立ち、相手を責めるのではなく自分の素直な感情を伝えるようにしましょう。

4. 相手と距離をとる

すぐに手を打てる対処法としては、ロジハラをする人とは必要最小限の関わりに留め、距離を取ることです。自分のメンタルを守るためにも、ロジハラをする相手と接触の機会を減らすことを心がけてください。

ただし組織で働いている以上、完全に関わりを断ち切るのは難しいこともあると思います。どうしても関わらないといけない時は、なるべく発言を正面から受け止めないようにして、自分の心を守りましょう。

5. 上司や専門部署に相談する

ロジハラ対策に効果的なのが、上司や社内の相談窓口などの頼れる第三者に相談する方法です。

声を発するのは勇気がいるかもしれませんが、一人だけで悩みを抱え込まないことも大切です。

直接仕事で接点がある人に相談するのは抵抗がある方は、社内に「ハラスメント窓口」があれば利用することもおすすめです。

事実関係のヒアリングから、防止措置対応まで相談できるので、会社として措置が必要なレベルのハラスメントの場合は、専用窓口を利用するようにしましょう。

まとめ

ロジカルであることは仕事において必要ではあるものの、他者と仕事をする以上それだけでは円滑に進みません。

昨今「肉体労働」「頭脳労働」に続く第三の労働として「感情労働」が注目を浴びています。アメリカの社会学者アーリー・ラッセル・ホックシールドが提唱した概念で、感情の抑制、緊張、忍耐などコントロールが必要とされる働き方を指します。

ストレスがまん延する現代社会は、感情労働の割合が多くなっているといわれます。

ロジハラの加害者にも被害者にもならないために、他者とコミュニケーションをする際には、論理だけではなく感情面への配慮を忘れないようにしましょう。

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