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副業には「攻めの副業」と「守りの副業」があります。副業とひとくちにいっても、それで自分の付加価値を高めていける人と、逆にキャリアが先細ってしまう人がいるのです。
副業に関心のある方にとってドキッとさせられるこの言葉。こう語るのは、本業ではWebサイト制作の支援サービス「Kaizen Platform」でグロースハッカーとして活躍し、今年副業の「作曲活動」のために拠点をオーストリア・ウィーンに移した花田貴志さんです。
花田さんいわく、「攻めの副業」とは、副業であっても自分をトップに持っていけるものであり、本業とのシナジーを生むもの。せっかくの副業なのに、ただ収入を増やすためだけに本業とまったく同じ仕事をやるのではもったいない。
そして、攻めの副業を選び取る秘訣は、「自分の内なる情熱」に耳を傾け、それが自然と向かう方向に気づくことだそう。その前提として、副業ならではのビジネススキルと自己管理が必要でーー。
「攻めの副業」と「守りの副業」の違い、副業で自分の付加価値を高めるための仕事術について、今回は日本とウィーンをSkypeでつないでお話を伺いました。

PROFILE

- 花田貴志
Kaizen Platform グロースハッカー - 東京在住時はWebデザイナーとして活動。Webサイトデザイン支援サービス「Kaizen Platform」と出会い、グロースハッカーに転身。同社主催の「グロースハッカーアワード 2017」では、「DODA “未来を変える” プロジェクト賞」(スポンサー賞)を受賞するなど活躍。副業の作曲活動のため、今年3月、音楽の本場、オーストリアの首都ウィーンに移住
実践者が語る副業の「実際」
ーグロースハッカー兼作曲家としてウィーンで活動されている花田さん、どのような日々を過ごしているのでしょうか。
本業は、Kaizen Platformのグロースハッカー。肩書きのとおり、企業の「グロース(成長)」をWebサイトを「ハック」して支援すべく、リモートで働くデザイナーへのアドバイスや、彼らが制作したデザイン案の審査を行っています。
Kaizen Platformは、グロースハッカーやデザイナーと企業のプロジェクトとをマッチングするサービスです。リモートワーク自体は東京にいたころからしていましたが、おかげで海外で働ける環境を整えることができ、移住が実現しました。

移住先としてウィーンを選んだのは、「作曲家」として活動するためです。作曲活動を副業にし、音楽の分野でも上を目指したかった。だったら、「音楽の本場」に行かないとと考えまして。そんな挑戦ができるのも、本業あってこそですが。
平日は、起床して午前10時からグロースハッカーとしての仕事を開始。常時10以上のプロジェクトに携わり、顧客企業ごとに定められたデザインの要望書と照らし合わせ、デザイン案を確認し、デザイナーにフィードバックをしています。

平日の夕方以降、それと週末は作曲活動に充てています。最近は音楽学校にも通い始めました。作曲活動で大きな収入を得るのはまだまだこれからですが、音楽家との交流が増えるなど作曲活動の基盤は整いつつあります。
ー日本でも副業が広がりつつあります。花田さんからして、副業のメリット・デメリットは何だとお感じですか。
副業をする場合、リモートワークになる場面も増えるでしょう。当然、対面でコミュニケーションする回数はグッと減ります。働き方の自由度を高めるという意味ではメリットですし、雇い主との信頼関係を損ねるリスクが高まるという意味ではデメリットです。
副業をする個人としては、本業一本で働いていたときよりも「きちんと仕事はしています」ということを雇用主に伝え続けなければいけない。そのためには、雇用主との間で仕事の要件を握る、齟齬が生じないよう要所要所で確認作業をする、アウトプットの品質を高く保つ、締め切りやスケジュールを守る。
つまり、ビジネススキルはもちろんのこと、自己管理がより求められます。裏返せば、自己管理ができて信頼性を担保できる人しか副業は許されない。

副業のデメリットとして、「企業に対する帰属意識が薄まる」ことを挙げる人、特に経営者がいますが、信頼関係さえ保てるのであれば、むしろ逆で、帰属意識は高まると思います。信頼し合える関係を築けること自体が、企業の魅力になり得るからです。
「攻めの副業」と「守りの副業」の違い
ー冒頭で、副業には「攻めの副業」と「守りの副業」とがあるという言葉をご紹介しました。その真意、違いとは何でしょうか。
「守りの副業」というのは、「せっかくの副業なのに、本業とまったく同じ内容の仕事をもう一つ、ただリモートワークでやっています」というのではもったいない、ということ。
なぜなら、今の自分でこなせる仕事を増やすというのは、「自分の切り売り」でしかなく、現状維持ならまだしも、そのスキルが陳腐化したときにはキャリアが先細るおそれがあるからです。
「せっかくの副業」と言ったのは、本業が安定しており、そもそも副業が許されるほどスキルが高い人なら裁量、つまり仕事の選択肢は多いはずです。であれば、付加価値をさらに高めるための活動だったり、本業と一見関わりのなさそうなことをしたっていい。
本業と同じ仕事を副業にして、自分の時間と引き換えに収入だけを増やそうするのは、はたして「成長」や「キャリアアップ」と呼べるのかーー。自分への戒めも込めて、そう思うんです。
ーでは、「攻めの副業」とは何でしょうか。花田さんにとって、なぜ作曲活動は攻めの副業と言えるのでしょうか。
攻めの副業とは、趣味ではないもの。副業だとしても、その分野で自分をトップレベルに持っていける可能性があるもの。もしくは、高いレベルを目指せる環境に自分の身を置いて取り組む、ワークスタイルのことです。
私は、音楽を副業にするために、世界最高のオーケストラがあるウィーンを選びました。サーフィンを副業にしたいなら、自分が住む場所よりもっと良い波がくる海の近くを選べばいい。高いレベルを目指す上では、学習や実践の繰り返しが欠かせませんから。

「それ、趣味ですよね」と他人に言われてしまうようではいけません。それに、真剣に打ち込める副業だからこそ、本業にも良い影響があるんです。「まったく別の分野の知識であっても、かならず活きる」という感覚は、読者の方もお持ちのはずです。
例えば、今、「本業」でグロースハックに関する教則本を執筆中なんです。「Webサイトの購入ボタンにはこの色がいい」とか、「Webサイトの効果的な余白の使い方はこうだ」とか、他のリモートワーカーの人たちに役立ててもらえるように。
そういうグロースハックについて考えるときに、意外と「副業」で得た知識ーー例えば、管弦楽のオーケストラにおける楽器の構成だとか、個別の楽器が奏でる適切な音の大きさだとか、そういう知識が「変換」できることがあるんです。
「管弦楽とグロースハックの掛け合わせ」だなんて、誰も考えませんよね(笑) だからこそ、そうして得られたアイデアって希少で。このように、「真剣に取り組む副業と本業の掛け合わせ」は、その人の付加価値をかならず高めてくれます。
「攻めの副業」の見つけ方
ーちなみに、執筆中の「教則本」というのは、本業の一つとして収入が保証された「お仕事」なのでしょうか。
いいえ。「完成したら、どこかで本として出版できたらいいな」くらいにしか考えていなくて、いつまでに、どこで、いくらで売るかはまだ決まっていません。

やることは山積みなのにどうしてそんなことをするかというと、本業であっても「自分の切り売り」にはしないためです。
繰り返しになりますが、今の自分でこなせる、今誰かから与えられている仕事をしているだけでは、それは現状維持。キャリアの先細りになってしまいます。
ですから、自分のスキルを、私の場合だったら「本」という体系立てられた理論に落とし込み、それを多くの人に使ってもらうことで、自分の付加価値を高めようとしているんです。
そうすれば、わざわざ副業の時間を削ってまで日本に出張しなくても、ネットワークを広げられるじゃないですか。本業でも新しい挑戦の機会につながるかもしれない。
ーすばらしいですね。では、先ほどの「攻めの副業」を見極め、選ぶ秘訣は何でしょうか。

感情論みたいに聞こえるかもしれませんが、「放っておいても自分の情熱が向くもの」が、その人にとって「攻めの副業」です。なぜなら、情熱がないと本気で取り組めない。情熱がないと続かず、「趣味」で終わってしまう。
音楽でも何を選ぶにしても、根っこに情熱があるものを選んだ場合、そこで得た知識は自分の骨肉になります。すると、本業も副業も自分の身一つで行っていることに違いはありませんから、何かしらのつながりがかならず生まれる。
ですから、攻めの副業を選ぶための秘訣は、「自分の情熱が放っておいても向くものに、気づくこと」だと思います。
ーそして情熱を傾けるうちに、副業が次の本業に変わるかもしれないと。
そうですね。そのためには、副業であろうとその分野で自分をトップの位置に持っていける場所に、自分の身をおくことが大切です。

ー最後に「副業」、そして今の働き方は楽しいですか。
エキサイティングですね。まだまだ発展途上ですけれど、楽しいです。
私にとって「楽しい」の根源は、「より未知なことに触れる機会を得られること」。もしかしたら、沖縄という島国で育ち、もっと広い世界を見たいと思って、東京へ、そしてウィーンにたどり着いたのかもしれません。
そういう「自分の好奇心に素直になること」と「働くこと」を両立できる時代が、今ですよね。

[取材・文] 岡徳之
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