日系メーカーから外資系ITへ 「異文化×異業種転職」の実態は? アドビ社員に聞く

メインビジュアル

doda X(旧:iX転職)は、パーソルキャリアが運営するハイクラス転職サービス。今すぐ転職しない方にも登録いただいています。
今の自分の市場価値を確かめてみましょう。

モノづくり企業からIT企業へ、日系から外資系へ――業種や資本の異なる企業への転職は、ハードルが高いイメージがあります。転職後も、仕事の進め方やカルチャーの違いに適応していくのに、不安を感じる人も多いかもしれません。

こうした大胆な転職を成功させるポイントはなにか? 転職後、前職との違いを乗り越えるためにはどうすれば……。日系電子部品メーカーから外資系IT企業のアドビに転職し、マーケティング部門で活躍する皆藤智子さんにお話を伺いました。

転職後の意外な発見

―前職は日系の大手電子部品メーカーと伺いました。

新卒で入って、13年ちょっと働いていました。そこでは、売上の分析、市場調査、競合分析といった業務のほか、全社方針立案の支援や遂行管理などの業務を10年近く担当していました。

その後はデジタルマーケティングの部門に移って、マーケティングマネジャーとしてグローバル市場向けのオンラインイベントの企画やデジタル広告、コンテンツ制作を通じたリードジェネレーション(見込み顧客を獲得するための活動)やメールマーケティングを担当していました

―そして今年5月に、アドビに転職されました。

はい。アドビの「Adobe Document Cloud(ドキュメントクラウド)」事業部門のマーケティングを担当しています。

アドビは大きく分けて3つのクラウドサービスからなる製品群がありまして、Adobe Document Cloudは、文書電子化や電子サインのソリューションなどを扱います。「BtoB」がメインで、私が所属しているチームでは、中小企業から大企業まですべてを担当しています。

コロナ禍でリモートワークになって、押印ができない問題に直面する企業が多い中で、文書電子化や電子サインはすごくホットな話題。私自身、前職で「電子サインができたらいいのに」と思っていたので、マーケティングのやりがいのあるプロダクトだなと思っています。

「Adobe Document Cloud」
「Adobe Document Cloud」

―「BtoB」のデジタルマーケティングというのは、具体的にはどんなことをするのですか?

オンラインセミナー、デジタル広告、コンテンツ制作を通してリードジェネレーションを行う施策を実施しています。

主にやっているのはオンラインセミナーですね。もともとは対面で実施していましたが、今は対面で集まることが困難になったので、オンライン上で毎月のように行い、多くのお客さまに製品の良さを知ってもらう活動をしています。

オンラインセミナーの準備は3カ月ぐらい前から始まって、社内の営業部門やプロダクト担当チームなどと相談しながら、まずはテーマを選定します。そこから具体的な企画を1カ月ぐらいかけて練り、イベント告知用のWebページや広告、メールなどのコンテンツを制作して、開催の1カ月前から集客を開始します。そしてセミナーが終わった後は、参加いただいた方のフォローアップをすぐ始めていくという形です。

―前職とは扱う商品が違いますが、「デジタルマーケティング」という点は共通していますね。

今お話したような仕事の進め方や仕事内容は、前職のデジタルマーケティング部門のものと、実はすごく近いんです。

日系企業から外資系企業に転職して、プロダクトもハードからソフトウェアへと大きな変化がありましたが、いろんな部門の方たちと協力しながらオンラインセミナーを企画したり、さまざまな情報発信をしたり……というのは、思っていた以上に前職での業務内容と近くて驚きました。

スピード感と裁量の違い

―仕事内容は前職と似ているとのことでしたが、違いを感じるところは?

やはり時間の流れ方、ビジネスのサイクルが圧倒的にアドビのほうが速いです。サブスクリプション型のビジネスなので、新しいお客さまの入りが、日次でもウィークリーでもどんどん見られます。

前職では、中期計画や年間計画を練り上げていく、またその達成要因、未達要因もしっかり振り返っていくというスタイル。それに対して、今は基本的に3カ月のプランがちゃんと達成できるかをウィークリーでチェックする、という仕事のサイクルです。

ぼやぼやしていたら、あっという間に3カ月ぐらい過ぎてしまうので、パッと動いて、修正しながら動いていくことが今までよりもすごく求められるな、と。「即断力」っていうんですかね。

―自分で決める「即断力」が求められるんですね。

裁量が大きくなったとは感じますね。それも、役職的にすごく上がったというわけではなく、もともと個々人に与えられている裁量が大きいんだろうな、と。

前職時代には、例えばイベントに出展する際もなぜそのイベントなのか、目的やゴールはなにかなどをきっちり説明して、上司の許可を得ていたのに対して今は、もちろん上司や同僚は相談に乗ってくれますが、与えられた予算内で結果を出すこと、そのための予算の使い方を自分自身で決めていくことが求められています。

自分でパッと決めればすごく速く進みますし、悩んでいたらいつまでも決まらない、という感じです。

最初は「本当に自分だけでこれを決めちゃっていいのかな」と、決めることが怖くて、初動が遅れてしまっていたのですが、ちょうど1クオーターを終えたところで、「このくらいのスピード感を求められているんだな」と、温度感がつかめてきたところです。

―これまでは上司の判断を仰いでいたことを自分で考え、決断することになったことで、ご自身の変化はありましたか?

なにか達成するために必要なことを決めるまでの、自分の中での思考プロセスは前職も今もたぶん一緒ですし、どちらにしても、成果を出さなきゃいけないのは一緒です。

一方で、「会社」や「上司」ではなく「自分」が判断する範囲が増えたので、短時間でたくさんの業務を進めることができるようになりました。それから、施策の成果や自分の判断を振り返る際に、より「自分ゴト」として捉えられるようになったような気がします。自分で決めて自分でやったことだから、良かったことも悪かったことも、より自分で受け止めるようになったというか。

100%自分の責任で、自分で判断して動けるというのは、慣れるまではすごくドキドキしましたが、面白いところでもあるな、と思っています。

転職のタイミングとめぐり逢い

―新卒から13年働いたタイミングで転職されましたが、どうしてそのタイミングで転職を考えたのでしょうか?

それまでにも自分自身のキャリアに向き合って、ほかのチャレンジをしてみたいなと思うこともあったのですが、プライベートとのバランスを取るうえで、「今はどうしても無理だな」という状態がずっと続いていました。

夫が単身でインドに駐在したり、第1子を妊娠して産休・育休を使ってインドで産んだり、その後日本に帰ってワンオペの期間があったり、第2子を産んだり……前職にいたときは正直、仕事を続けるだけで精一杯なところがありました。

でも、上の子が今年ちょうど小学生になって子育てもちょっと一段落したし、夫もしばらく海外転勤もなく、転職をはばむものがプライベートでなくなったのはタイミングとしては大きかったと思います。プライベートの状況とキャリア面で新しいチャレンジをしたいという両方のタイミングがうまく重なったので、今だな、と。

―どんな企業や職種を求めていましたか?

短いながらも前職でのマーケティングの仕事にすごくやりがいを感じ、一定の経験は積めたかなと思っていたので、その経験を生かしたいという思いは一つありました。なので、ポジションが上がるか下がるかは全然気にせず、業務内容が前職とあまり大きくは変わらないところをイメージしていました。

一方、前職では広くグローバル向けのマーケティング施策を担当していたため、施策を実行した後の状況が身近に感じにくいところもあり、担当市場を持ちたいという思いもありました。それでも「グローバル」の軸は残しておきたかったので、「外資系の日本法人」が候補として挙がりました。

なにより、自分自身アドビのデジタルマーケティングソリューションのユーザーだったので、「自社プロダクトのBtoB向けマーケティング活動」という軸で見たとき、アドビは大きな候補でした。

―転職活動はどのように行ったのでしょうか?

転職サイトや転職エージェントにはひと通り登録していました。アドビでは「オープンポジション」に応募して、最初は人事の方に「現時点ではちょうどいいポジションがありません」と言われたのですが、3~4カ月ぐらい経った後に「あなたのキャリアにすごくマッチするポジションが空いたから、応募してみませんか?」というご連絡をいただいて。

私は、幅広くマーケティングをしつつ、企画運営する仕事を求めていたので、アドビの方からお声がけいただいたときは、「自分がやりたい仕事とぴったり合うポジションにめぐり逢うことができた」と感動しました。

―日系企業から外資系企業に転職する際、不安はありましたか?

外資系企業は、それぞれの職種のプロフェッショナルがそろっている印象だったので、本当に自分の経験が活かせるのか、すごく不安でした。日系企業でジョブローテーションを繰り返しながら、最終的に流れ着いた場所がマーケティングだったという「超ジェネラリスト」のバックグラウンドで大丈夫かな、と。

ですが、結果的には前職でやっていたことが今もすごく生かされていて、それは嬉しい驚きでしたね。

強みも弱みもオープンに

―最終的にアドビを選ばれる決め手となったのは?

採用プロセスで出会った人事やチームの上司が「一緒に働きたい」と思わせてくれるような方たちだったのがまず一つ。今のマーケティングチームの方たちと実務の話をしたときには、オンラインセミナーの難しさなど、共感できる課題感も感じました。

それから、面接のときには背伸びをしすぎないように心がけましたが、ありのままの自分を受け入れてもらえたので、「やっていけるかもしれない」と思いました。

ジョブディスクリプションも本当に穴があくほどよく見て、やりたいことや、できることとできないことをありのままに伝えつつ、それがちゃんとマッチしているかをよく確認したうえでオファーをいただきました。

―入社後、スペシャリスト集団の中で不安を感じる中、それをどう乗り越えていきましたか?

みなさんすごく気さくですし、アドビには「ダイバーシティとインクルージョン」のカルチャーがあるので、すっと入っていきやすかったです。私自身が「ここにいていいんだな」と思えるようなウェルカムな空気をつくっていただいたことで、自信がついたと思います。

あとは、採用面接のときもそうですが、「できることもあれば、できないこともある」「強みもあれば、弱みもある」ということをなるべくオープンにしておくことが大事ですね。

自分をさらけ出すことで、貢献できる領域が見つかっていきます。そういう領域を増やしていくことで自分に自信も湧いてきます。

―皆藤さんが前職で培ってきた強みも、新しいチームにいい変化をもたらしているんでしょうね。

前職では、きっちりとした仕事の進め方を13年間叩き込んでもらいました。アドビでも「丁寧に仕事を進めてもらえて助かった」と言ってもらえることがあるので、それは自分の強みなのかもしれません。

一つひとつの仕事を丁寧に進め、次の工程を担当する人にやりやすい形で仕事をパスするという、日系企業で染みついた仕事のやり方は、これからも活かしていきたいです。

アドビ株式会社 マーケティング本部 Document Cloud B2B マーケティングスペシャリスト 皆藤智子
大学卒業後、2008年に大手日系電子部品メーカーに入社し、企画関連部門を経てマーケティングコミュニケーション部に所属。グローバルのデジタルマーケティング戦略立案および各種キャンペーンの企画実行を担当。2021年5月よりアドビ株式会社にて現職。「Adobe Document Cloud」のBtoB領域におけるリードジェネレーションおよびリードナーチャリング活動に従事している。

[取材] 岡徳之 [構成] 山本直子

今すぐ転職しなくても、
まずは自分の市場価値を確かめて
みませんか?

変化の激しい時代、キャリアはますます多様化しています。
ハイクラス転職サービス「doda X(旧:iX転職)」に登録して、
ヘッドハンターからスカウトを受け取ってみませんか?