ハイパフォーマーだけが実践する、本当のマインドフルネスの活かし方

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昨今、GoogleやMicrosoftをはじめ、世界中のハイパフォーマンスな企業が注目するのが「マインドフルネス」というキーワード。一方で、「ヨガや瞑想を取り入れるの?」「仕事の中にゆとりが取れるような時間を組み込むの?」など、どう具体的に取り組むべきか、そのとっかかりをイメージできないことも少なくありません。

そこで『“未来を変える” プロジェクト』では、ビジネスパーソン向けのマインドフルネス入門書『疲れない脳をつくる生活習慣』の著者で、予防医学研究者の石川善樹氏をゲストスピーカーにお招きし、議論イベントを共催しました。

議論のテーマは「企業でのマインドフルネス」。石川氏にマインドフルネスの基本コンセプトを語っていただいた上で、ビジネス領域の最前線で活躍する約40名の参加者によって、議論を進めました。その結果浮かび上がってきたのは、人材の採用や仕事のマネジメントにも関わる、マインドフルネスの活かし方の発見でした。

今日からでも活かすことができる、マインドフルネスに関する捉え方のフレームと、具体的なアクションをどうぞご覧ください。

本日のアウトラインです。

INDEX読了時間:5

それでは、本文です。

マインドフルネスになるための3つの条件

石川氏が冒頭に提示した「究極のマインドフルネス」は、いわゆる「フロー」「ゾーン状態」とも呼ばれる状態であり、高い集中をし、時間が流れるのを忘れて没頭している状態を指していました。

この状態になるための条件は3つ。

  1. 高いストレス・不安
  2. リラックス
  3. やるべき行為への集中
マインドフルネスになるための3つの条件

この理論は、「チベット仏教の高僧が瞑想しているときの脳波と、ジェットスーツなどのエクストリームスポーツに取り組んでいるプレイヤーの脳波が同じものであった」というエピソードと関係があるとのことでした。

僧侶とエクストリームスポーツ

僧侶は、深い瞑想に入るときに、まず「とても苦しい思いをしている人、可哀想な人」を思い浮かべ、自分に高いストレスをかけます。次に、その人を自分が救って差し上げて、幸せになるイメージをもつことで一気にリラックスし、そして深い集中状態に入るというのです。

同様に、この図にあるエクストリームスポーツ(極めて危険なスポーツ)では、まず取り組むときに「大怪我をするかもしれない、下手をすれば死ぬかもしれない」という極度の不安とストレスを感じます。そこを思い切って一気に取り組み始めると、フッと自分自身が極限の状態でもコントロールできることを感じ、リラックスします。そして、集中する。

このように、究極に集中する状態、ゾーンと呼ばれる状態がまさにマインドフルネスの究極の状態でもあり、それは、

  • まず、高いストレス・不安を感じる
  • 次に、リラックスし、解放される
  • そして、ひたすら目的に集中する

という手順で導かれることがわかってきたとのことでした。

これが、今回の議論の刺激、インプットとなった、石川氏からの情報提供でした。

このフレームで一気に見方が変わる「組織でのマインドフルネス」

このインプットの直後に行われた議論では、ある大手IT企業の社員が、興奮気味にこう切り出しました。

これで、すべてが腑に落ちた感があります。今まで悩んでいた、当社でのマインドフルネス導入の悩みが、一気にふっとんだ気分です。

彼が続けるには、以下のようなジレンマがあったそうです。

マインドフルネス導入に対する某社のジレンマ

  • 組織内でマインドフルネスを導入しようとし、「いかに社員がリラックスし、伸び伸びとしたらいいか」を模索しようと考えた
  • ところが、手始めに自社のハイパフォーマー(高業績者・エース人材)にヒアリングをしたところ、みんな極度に高いストレス・不安を感じて仕事しているという点が共通項だった
  • はたして、本当にリラックスする、というのが組織にとっていいことなのか、分からなくなった。マインドフルネスとはいったい・・・

ところが、下図のようにマインドフルネスを捉え直すと、一気にすべてがつながり、打ち手が見つかったというのが、彼の指摘する点でした。

マインドフルネスを捉え直すと・・・

組織におけるマインドフルネス導入

  • 自社の環境・仕事の中で、マインドフルネスに入るための適切な不安・ストレスと、必要なリラックスの両方が、しっかりと「落差」を以って生み出されるようにする
  • リラックス、リラックスと強調し、結果的に適切な不安やストレスを下げてしまっては本末転倒
  • リラックスができていない人、そのパターンを作れていない場合には、それを提供する

という、いわば「不安とリラックスの落差レンジコントロール」こそが、本質的に企業が行うべきマインドフルネスへの取り組みである、というのがここから導かれた仮説となりました。

ストレス・不安の尺度が合っているのが、ハイパフォーマー

「適切なストレス・不安」という切り口に関して、今回の議論にも参加した、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役人事総務本部長の島田由香氏は、次のような指摘をしました。

会社で結果が出せるハイパフォーマーは、完全に不安、ストレスとか、ストレッチな状況への捉え方が、他の人と決定的に違います。直面した状況が、ビジネス上どのような重要度があるかを、適切に把握し、「これは重要なものだよね」というテーマに関して、いい意味の不安やストレスを感じられるんだなと今回あらためて思いました。言い換えれば、状況に対して不安やストレスを感じる「スケール(ものさし)」が適切なんでしょうね。

ハイパフォーマーでない人は、同じ状況に直面したとき、

  • 過度におそれてしまったり、緊張しすぎてしまう
  • 重要さが分からず、ポカーンとしてしまう

ということが起きてしまうのだと思います。

ストレス・不安の尺度

そして、島田氏を始め、議論に参加した多くのメンバーからは、こうした点が組織運営でもっとも影響を与えているのは、「採用活動」であるとの声が多く上がりました。

多くの面接で使われる手法は、今回の観点と照らし合わせると、以下のように考えることができます。

適切なストレス・不安のスケールをもっている人材の採用方法

企業によって「ストレス・不安の適切な尺度」は千差万別

このように、ストレス・不安に関する適切なスケールをもった人材が重要だという議論から続いたのは、

企業・組織によって、ストレス・不安を感じるレンジはまったく違う。

という議論でした。

前出の大手IT企業の場合であれば、時代の変化やユーザーの嗜好するアプリの変化などにすばやく対応する必要があるため、「スピード感」や「ユーザーの変化」といった点に高いストレス・不安を感じることが不可欠となります。

一方で、同じ議論に参加していた、大手の重工業メーカー社員によると、その観点としては、「多くの関係者の合意」「製品の安全性を確保するための緻密さ」といった点にストレス・不安を感じられることが重要となる、といった次第です。

言い換えれば、ある企業で十分なパフォーマンスを発揮できない人は、その企業にとって重要なテーマに対して、あまり尺度が合っていない可能性が高い。だからこそ、もっと自分がもっている尺度が重要だとされる企業に移ったら、ハイパフォーマーになる可能性があるということになります。

以上のようなことを考えると、企業にとっての「マインドフルネス」は、単にリラックスするための方法などを超え、採用などに大きな影響をおよぼすことがわかってきました。

個人として仕事にマインドフルネスな時間を増やすための3ステップ

さて、これらの議論が企業・組織運営側における「マインドフルネス」導入の新たな切り口へのフォーカスだとすれば、一方で押さえておきたいのが、「個人としては何ができるのか?」という観点です。

これには、以下の3ステップでのアプローチが有効です。

  1. 自分の日々のストレス・リラックスを観察する
  2. ストレスに感じることの本質を見極める
  3. リラックス量をコントロールする

1. 自分の日々のストレス・リラックスを観察する

まず、自分の一日の記録を15分単位で行い、その15分ごとに、

  • ストレス・不安の度合い(その15分間での最大値)
  • 集中度合い

の2点を記録していきます。

スコアリングするときの基準は、以下のように指定します。

スコアリングの基準

この基準を使って、なるべくこまめに、以下のようにエクセルファイルに、一日の行動を記録し、その瞬間のスコアを記入していきます。

一日の記録フォーム

そして、これらをグラフ化することで、自分が一日のどの瞬間に高いストレス・不安を感じ、どの瞬間にリラックスしているのかを可視化します。

一日のストレスと集中度の関係

これらの作業は、下記からダウンロードできるエクセルファイルのフォーマットをご利用いただくとできますので、ぜひともお試しください。

ファイルのダウンロードはこちらから (70KB)  

15分と細かい単位で行う理由は、ストレスのピークはかなり細かく訪れることがあり、例えば30〜60分の打ち合わせの中でも、その状況を捉えやすくするためです。

また、こうしたストレス・集中度の感覚は、数時間も経過すると忘れてしまうため、なるべく小まめに、空き時間ができたときに記録していきます。

2. 自分が活かせているストレスを見極める

一日のストレスと集中度の関係

次に、仕上がったグラフを観察しながら、自分のストレスがピークになり、その後に集中度が高く継続しているタイミングを見定めていきます。

今回であれば、事例の15:15〜15:45のタイミングでピークが発生したあとに、集中度の高い状態が続いています。

起きていることを振り返ってみると、社内予算の打ち合わせを行っており、このときに高まっているストレスとして、主要調達先との折衝の算段をどうするかというテーマで緊張が高まり、そこからの話し合いに高い集中力が発揮されています。

この振り返りから、本人が活かせているストレスとして、体外的な折衝に関するとりまとめの責任感とその内容に関する検討が、良いパターンであることが認識できます。

こうした「高いストレス→高い集中」というパターンを、一週間程度振り返り続けることで、自分が増やすべき「よいストレス」と、そのときに刺激される自分の価値観、会社の仕事の中で活かすべきパターンが明確になり、それを増やすことで、よりマインドフルネスになる割合を高めることができるようになります。

3. 自分が活かせていないストレスを探し出す

最後に行うのは、先ほどとは逆に、高すぎるストレスが発生し、その直後に集中度の高さが続かないというパターンです。

一日のストレスと集中度の関係

この場合、そのストレスについては、自分が受け入れられないほど高くなってしまっていたり、自分があつかうことが苦手なパターンのストレスということになります。

こうしたパターンについても、一週間程度蓄積することで、自分が避けるべきもの、自分が会社の環境の中、仕事の中でマッチしていないものが浮き彫りになっていき、この発生を抑える、あるいはストレスを和らげる工夫をすることで、マインドフルネスにいたる可能性を高めることができるようになります。

いかがでしたか。今日、これから着手する仕事について、より自分がマインドフルネスな状況をもたらせるように、まずはそのストレス観察から取り組んでみてはどうでしょうか。

[編集・構成]doda X編集部

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