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新規事業においては、いかに必要な人材を巻き込めるかがビジネスを成功へと導く大きなカギとなります。村田マリ氏は、大学卒業後にサイバーエージェントで数々の新規事業に携わった後、26歳のときに起業。現在も、DeNAのキュレーション企画統括部長として新規事業に携わっています。常にひとを動かすポジションを担ってきた村田マリ氏に、これまでの新規事業の経験とひとの巻き込み方について語っていただきました。

PROFILE

- 村田マリ
株式会社ディー・エヌ・エー執行役員キュレーション企画統括部長兼iemo株式会社代表取締役 - 早稲田大学文学部を卒業後、サイバーエージェント新卒1期生として入社。3年間務めたのちに独立。2005年にウェブ制作会社コントロールプラスを立ち上げる。会社を売却をし、2013年12月にキュレーションメディアを主事業とするiemo株式会社を創業。 「家の情報✕スマホメディア」という切り口で展開した同名のサイトが急成長。現在は、拠点をシンガポールに移し日本との間を往復する生活を送っている。
「妄想力」と「熱意」で口説く
ー2005年にコントロールプラス、2013年にiemoを設立されました。起業時はどのようにしてひとを集めましたか?
発案と創業は両社とも自分1人で行ったのですが、ひとの集め方に関しては異なります。
まず「自分でゼロから作りたい」という想いで立ち上げたコントロールプラス時代は、起業家としてのトラックレコードも人脈もほとんどない状態でしたので、自分と志が似た近しいひとを仲間に迎え入れました。
次に「これまでの集大成を作りたい」と考えて起業したiemo時代は、起業家としてのトラックレコードもあり、前社で築いたネットワークもあったので、比較的速いスピードで優秀なエンジニアや起業経験者を集めることができました。それまで手の届かなかったレベルの人材にアプローチする機会もあり、自分自身に説得力やビジョンを語る力が求められたのを覚えています。
私はiemo(イエモ)で「不動産✕スマホメディアで新しいイノベーションを起こしたい」と本気で考えていたので、それをいかに相手の心に響かせるかを考えました。求めていたのは、ダイナミックな挑戦をしたいひと。彼らを獲得するために、市場のポテンシャルの大きさやイノベーションの起きやすい環境があること、そして参画するならいまがベストなタイミングであることを力説したんです。
ー村田さんの強みは「求心力」だと一緒に働いていた方からお伺いしました。
正直、私は自分自身の強みに求心力があるとはあまり思っていません。なぜ周囲の方がそう感じたのか・・・
強いていえば、私は、相手に事業の中で一緒にやってほしいことが最大限魅力的に映るようなプレゼンテーションが得意だと思います。そして、それを支えているのは「妄想する力」だと考えます。
新規事業のアイデアを着想したときに、こんな風に成長するのではないか。成長した暁には社会はこう変わるのではないか。ユーザーの生活はこういう風に彩られるのではないかとイメージする力が強いです。普通に考えたら有り得ないことに可能性を見出そうといろいろな仮説を立てる力は、ひとより突出しているかもしれません。
それが説得力や影響力の強さにつながっています。自分の望みを人に伝達し、相手にもその世界を作ってみたいと賛同してもらうのです。私は1つのことにのめり込むと、とことん没頭してしまうほど熱エネルギーが高い。こういう未来を実現させたいと思ったら語る力も強まるので、ひとを口説くときもしつこいです。
もし相手に最初は「気持ちは分かったけど、会社を辞める気はない」と言われても「いや、この未来を実現させるためにあなたが必要です。お願いだから来てほしい」と粘り強く交渉して説得することもあります。もしかしたら、それが「人を集める=求心力」と映るのかもしれませんね。

村田マリさんの「青黒さ」と「上島力」
ー編集部が「新規事業」をテーマに主催したイベントでは、ひとを巻き込む際に必要な資質として「青黒さ」「上島力」というキーワードが飛び出しました。ご自身の経験上、思い当たることはありますか?
「青黒さ」とは、青が表す若さと、黒が表すその若さを逆手にとってひとを巻き込む腹黒さをあわせ持つこと。「上島力」とは、一見頼りなく見えるも、実はものすごくひとから慕われるような見た目と中身のギャップのこと。ダチョウ倶楽部の上島竜兵さんに由来する造語。
その言葉で例えるとすると、2014年にiemoが買収をされるとき、DeNAの代表取締役である守安功さんを巻き込んだことが浮かびます。どう巻き込んだかというと、キュレーションメディアである「iemo」を今後拡大していく際に上場を目指すという選択肢もあるなかで、自分たちはDeNAという大手企業に買収され、そのファシリティをフル活用することでiemoという事業を大きく育成することに集中したいという思いを伝えたのです。
そのときに気をつけたのは、熱量を伝えるだけでなく、DeNAという会社も買収してくれた暁にはこういった事業戦略ができるというビジネスの算段も論理的に伝えたこと。つまり、この経験で言える「青さ」は事業に対する個人の熱量で、「黒さ」となるのはビジネスパーソンとしての冷静さです。この2つをうまく組み合わせたことで、結果としてDeNAを巻き込めたのではないかと思います。
ー「上島力」についてはいかがですか?
私は身長が低いこともあって、起業した当時は「若くて小さい女の子が頑張っている」という見た目も功を奏して多方面の方に支えていただきました。ただ、中身はめちゃくちゃなギークなので「インターネットと新規事業の立ち上げが大好きで、一度のめり込むと最大限の熱エネルギーを注ぐ若手起業家」とも思われていました。この中身と見た目のギャップがひとに注目してもらえた理由だと思います。
「女性起業家」と呼ばれることもあり、固いひとというイメージを持たれがちですが、実際にはなにか夢中になると寝食忘れてしまうところがあり、よく心配されます。だから身近にいるスタッフは「このひとは、私たちがいないとダメなんだな」と思って支えてくれているのかなと思いますね。
DeNA南場智子さんの求心力の源泉
ー村田さんがこのひとの求心力はすごいと思う方を挙げるとすれば?
DeNA創業者の南場智子さんですね。南場さんは「共感力」がずば抜けて高く、ひとの心をつかむのが上手なので、一緒になって事業を成功させたいと思わせてくれます。
それには南場さんの「使う言葉のよさ」があると思っていて、話す内容にどんどん惹き込まれていきます。こちらがほとんど話していないのに、心の中に秘めていた苦労や悩みをズバッと言い当てられることも。
そして、現在担当している事業やスタッフのマネジメント状況を全部察した上で、解決策を提案をしてくれることもあるので「こんなに分かってくれているんだ」と感動することがよくあります。その共感力の高さに、みんな惹かれているのではないでしょうか。
それに加えて、社員がのびのびと仕事に集中できる環境づくりや、部下を信頼して仕事をまかせてくれるマネジメントのスタイルも求心力のひとつだと思います。こうして南場さんや守安さんをはじめDeNAの先輩方からいまでも学ばせていただいています。
ースタートアップから大企業に移ったいま、新規事業の進め方にどんな違いを感じますか?
スタートアップの頃は、1人の熱エネルギーが伝播しやすくて、ノリや熱量だけでカバーできることが多かったのですが、大きな組織になるとそうはいきません。
きちんと説明義務を果たさないといけないし、統率力も求められます。1人ひとりの納得感を醸成していかないと、100人以上の規模を動かすことは難しいでしょう。
私の考える「優れたマネジメント」とは、ひとに仕事をまかせきることのできるスタイルのこと。事業にひとを巻き込み、ともに作り上げていくためには、マネジメントする側が想像力を働かせ、チームメンバーの不安材料をできるかぎり取り除くように心がけることが大切です。そして、事業を成し遂げるためのステップやビジョンを現場にしっかり伝え、共有していくことが大切ではないでしょうか。
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[取材・文] 井上美穂
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